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採択後の手続き

補助金で買った設備は、勝手に売れない

/ 執筆:行政書士 後藤 和樹

結論

補助金で取得した設備は、入金が終わったあとも一定期間、事務局の承認なしに売却・廃棄・貸付けができません。根拠は補助金適正化法第22条です。承認を受けずに処分すると、交付決定の取消しや補助金の返還につながることがあります。

採択後の手続きのご相談で、意外と多いのがこの質問です。「補助金で入れた機械を下取りに出したいが、問題ないか」。答えは、制度と時期によっては問題になります、です。

補助金は、受け取って実績報告が終わればそれで完結、という制度ではありません。設備が手元にある間は、使い方にも縛りが残ります。ここを知らないまま設備を入れ替えてしまうご相談も届きます。

なぜ、買った設備なのに自由に処分できないのか

根拠は法律です。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)の第22条は、次のように定めています。

「補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用、譲渡、交換、貸付け、又は担保に供してはならない。」(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第22条)

補助金は税金です。特定の目的のために国がお金を出した以上、その目的に反する使い方は認めない、という考え方です。設備の所有権は会社にありますが、使い方には条件がついている、と理解しておくのが実務的です。

同法の施行令では、制限の対象になる財産として不動産、船舶や航空機、そして機械および重要な器具で各省各庁の長が定めるものが挙げられています。工場の機械や店舗の設備は、この3つめに入ります。

何が対象で、いつまで続くのか

多くの補助金では、取得価額が単価50万円(税抜き)以上の建物・機械器具・備品などが処分制限の対象として案内されています。この金額以上のものは「取得財産等管理台帳」に載せ、処分の際は事務局の承認を受けるという運用です。

いつまで続くかは、制度ごとに決められた処分制限期間によります。多くの制度では「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の耐用年数を基準にすると案内されています。つまり、税務上の償却が終わるくらいまでは制限が残る、というイメージです。

項目一般的な取扱い
対象になる財産単価50万円(税抜き)以上の建物・機械器具・備品など
期間の考え方減価償却資産の耐用年数等に関する省令の耐用年数に準拠
台帳取得財産等管理台帳に記載して管理する
処分するとき事前に事務局へ財産処分承認申請書を提出し、承認を受ける

対象額・期間・様式は制度ごとに違います。上記は公表されている複数の補助金の案内に共通する取扱いです。実際の扱いは、ご自身の制度の「補助事業の手引き」でご確認ください。

注意したいのは、補助事業の期間が終わっても、処分制限は残るという点です。実績報告を出して入金を受けた時点で終わり、ではありません。

「処分」は、売却だけを指すのではない

ここが誤解されやすいところです。財産処分にあたる行為として案内されているのは、売却だけではありません。

  • 目的外使用(補助事業とは別の用途に転用する)
  • 譲渡(有償・無償を問わない)
  • 交換(下取りに出すのもここに含まれ得ます)
  • 貸付け(有償・無償を問わない)
  • 担保に供する処分
  • 廃棄

「壊れたので捨てた」「グループ会社に貸した」「無償で譲った」。どれも該当する可能性があります。お金を受け取っていないから大丈夫、という理屈は通りません。

また、設備を担保に入れる場合も対象です。借入れの条件として設備に担保設定を求められたとき、補助金で導入したものが混ざっていないかは確認が必要です。

承認を受けずに処分すると、どうなるのか

事務局の承認を受けずに貸付けや転売などを行った場合、交付決定が取り消されるとする案内があります。取り消されれば、受け取った補助金の返還という話になります。

承認を受けて処分する場合も、それで終わりではありません。制度によっては、残存簿価相当額または時価(譲渡額)をもとに算出した補助金の全部または一部を納付することになります。納付の期限は、承認の通知日から30日以内の一括納付と案内されている制度もあります。

つまり、下取り価格がそのまま会社に残るとは限りません。設備の入れ替えを検討するときは、下取り額と納付額を並べて見ないと、資金繰りの見通しを誤ります。

あわせて、補助事業の成果によって収益が出た場合に、補助金額を上限として一部を納める収益納付の仕組みを持つ制度もあります。財産処分とは別の話ですが、どちらも「報告が続く期間」に起きる論点です。

いつ相談すればよいか

相談のタイミングは、設備を動かす前です。事前の承認が前提の制度で、処分してから相談されても打てる手が限られます。ここは順序がすべてです。

制度によっては、補助事業の終了後5年間にわたって事業化状況の報告が続きます。ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金では、5年間で合計6回の報告が必要だと案内されています。財産の処分もこの報告の仕組みの中で申請する運用になっています。

実務では、次のような場面でご相談をいただきます。

  1. 補助金で入れた機械を、新しい機種に入れ替えたい
  2. 故障して使えなくなったので廃棄したい
  3. グループ会社や別拠点に設備を移したい
  4. 借入れにあたって設備に担保を設定したい
  5. 事業の再編で、設備ごと譲渡することになった

取得財産等管理台帳と交付決定の通知をお見せいただければ、どれが対象で、どの手続きが必要かをご説明できます。他社で申請した案件でも構いません。費用はご相談時にお伝えします。

関連ページ:採択後の手続き代行採択はゴールではない補助金と税制

出典

制度の内容・金額・締切は変更されることがあります。申請前に必ず最新の公募要領をご確認ください。

執筆

行政書士 後藤 和樹

後藤行政書士事務所 代表(行政書士 登録番号 25082067)。設備投資の1年前から、補助金の申請・採択後の手続き・入金までを伴走支援しています。

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